下唇を甘噛みされ、音を立ててからめ合わされる。
「ぁ……はう……」
そのまま、深く、息すら継げないほどの熱情と吐息とでうずめつくされる。
てのひらが、背中をつたって、乳房へとのぼってきた。
肌と、肌が、触れあう。
つ、と。
指先が、敏感な乳首の先に触れる。
「ん……」
びくん、と、身体と一緒に、声までもがふるえる。
ゆったりと包み込まれ、持ち上げられ、かるく揺すられる。
「あんっ……」
柔らかな刺激が、乳房全体に、ゆらゆらと伝わってゆく。
ラウは、恥ずかしさと気持ちよさに、眼を、きゅっと閉じ、顔を赤くさせて、息をあえがせた。
「きもち……いい……」
胸の先を、指で、ころり、ころり、優しくゆっくりと押し回されている。
心地よいさざ波が、アリストラムの手の感触と一緒になって、ラウの身体を揺らした。
とろとろした水みたいに揺れている。今までの自分の身体と、まるで、違う。
「あ……あっ……!」
掴まれた指と指の間から、乳房がはみ出すほどやわらかく、激しく、揉みしだかれる。
「キス、したい……アリスと……いっぱいしたい……」
「ええ、仰せのままに」
唇を重ねられ、喘ぎ声を盗まれる。
吐息のあふれる音をさせ、深く、熱く、舌を差し入れられ、からめられて。
すべてを、ゆだねる。
ベルトをゆるめられ。
固く嵌めていたボタンを一個ずつ、巧妙な指使いではずされて。
ゆるめられた隙間から、手が、そっと下着の奥へと潜り込んだ。
「はう……ん……」
脱がされもせぬまま、もう、濡れかけた下着の上を、そろり、そろり、と、指がなぞってゆく。
ラウは、絹一枚越しに伝わる欲望の気配に耐えきれず、甘く鼻を鳴らした。
「アリス……う……んっ……」
逃げながら身をよじらせ、もっとねだろうとしたところ、反対に、敏感すぎる耳をやわらかく、意地悪に噛まれる。
熱い吐息が耳元に吹き込まれた。
「ゃっ……あん……」
腰が、ひくっ、と跳ねる。
「ラウ」
おだやかな声。
「貴女を愛しています」
すべてを、預けられる。
心も、身体も、全部。
アリストラムに、すべてを。
想いのたけのすべてを――
「ぅ……ん……!」
声に、ならない。
触れているのかいないのかすら分からないぐらい、かすかに、そこを伝う、指の気配。
ラウはちいさくあえぎ、歯がゆい身体をうねらせた。
伝わってくる感触のめくるめく予兆のゆるぎなさに、息を継ぎ足すこともできない。
「ううん……」
ラウは甘く鼻声を鳴らして、ねだった。
「して……して……」
「何をですか?」
「ぁうん……ぜんぶ……」
「そんなに?」
「ぅぅん……見られ……たいの……全部……触って……ほしいの……」
「ずいぶんまた、可愛いことを」
アリストラムは柔和に微笑んだ。
「承知いたしました」
手のひらが、内腿のやわらかな肌の上を撫でてゆく。
さわさわと、触れる。
ぞくり、と感じさせられる。
いたずらな指先。優しいてのひら。熱い吐息。
愛される身体を、アリストラムが覆いつくす。
目が眩んで、息が乱れて。
眼も開けられない。何も見えない。
なのに、今、身体の全部が、アリストラムにあやつられるまま、誘われてゆくのが分かる。
「あ、ありしゅ……」
また、唇をふさがれる。なまめくアリストラムの吐息がラウを満たす。
「きもち……いい……よう……」
「それはよかったですね」
吐息をからめられ、心まで奪われて。深くくちづけられるたびに、ぴちゃ、と濡れた音がして。
気が付いたときには、腰を浮かされ、下着姿にされて。
最後の――一枚だけが残されている。
ラウは息苦しくあえいだ。
喉に息がつまって、声に、ならない。
手が、腰を、内腿を、背中を、風のようにそろり、そろりと撫でてゆく。
決して何か特別な感じ方をするところではない、はずなのに。
ただ、ただ、普通に、優しく撫でられているだけなのに。
やわらかな綿毛にくすぐられ、包まれているかのようだった。
そのたびに、びくっ、と。
身体の奥が、何かを期待して。
すくみ上がる。
「ぁ……ぁ……っ」
下着に、手が忍び入ってゆく。
「ゃ……っ」
いちばん敏感なところを探るようにして、触れられ――
と、思いきや。
そのまま、遠ざかってゆく。
皮肉に、いたずらに、あるいは無意識に。
意地悪な爪の先が周辺に触れ、つ、つっ、と、引っかくようにしては、離れ。
一瞬、とろっと濡れたところに触れられる。
思わず怖じ気づいて声を呑み、息を震わせてしまう。
「……ゃぁん……ぁっ……あ……」
そのたびに、わざと手を離されて。
お預けを食らっている、と気づいて、たまらずにラウはあえいだ。
半分うるんだ眼を開けて、まつげに涙の粒をいっぱいにためて。目尻を赤く染めて、アリストラムを睨みつける。
「あり……す……!」
「おや」
小憎らしいぐらい、平然とした微笑が返されてくる。
「どうかなさったのですか?」
「ぅ……っ……きゅ……ぅん……」
情けないぐらい鼻にかかった、甘えきった鼻声がもれる。
「可愛い声ですね」
アリストラムは、この上もなく優しい、優しすぎるぐらいにすげない笑みを浮かべた。
その間も、肌の表面ばかりを、つ、つ、と、愛撫する指づかいをやめない。
「あぅぅ……ううん……ありす……!」
「何でしょうか? はっきり言ってくれないと――してあげませんよ?」
その優しい意地悪が、あんまりにも焦れったくて、はがゆくて、やるせなくて。
かあっ、と全身が火照ってゆく。
ラウはアリストラムの肩に腕を伸ばし、すがりついた。首に腕をからめ、腰に手を回して、もっと、もっと、傍に近づこうとして身体をうねらせる。
尻尾がクッションを払い落としそうなほどに振り動いている。
「さわ……もっと、ちゃんと、触っ……」
背中に差し入れられたアリストラムの腕が、ふわりとラウの腰を包んだ。
「ぁああん……!」
「ちゃんと、何ですか?」
「ぁふ……ううん……」
くやしくて、恥ずかしくて。
半分泣きそうだった。なのに鼻の奥からは甘えきった子犬みたいな、きゅんきゅんいう声ばかりがこぼれ出てくる。
「……して……!」
「何を?」
あんまりにもからかわれて、恥ずかしくて。
ラウはついに顔を真っ赤にし、涙に濡れた目を吊り上げてアリストラムを睨んだ。
「アリスのいじわるっ! ……ば、ばかぁっ……!」
「何と」
ラウに睨まれたアリストラムは、ふと髪を揺らし微苦笑を浮かべた。
「この状態で誹られるとは。これはまた、何ともいえず……たまらなく来るものがありますね」
「な、な、何言っ……!」
あまりの言い草にラウはぶるぶる頭を振った。
意地悪にまとわりついてくるアリストラムの視線から逃れようとする。
「も、も、もういいもんっ、アリスなんてきらいっ! こんなこと、もう、二度としな……!」
指先が、そこに、触れる。
つぷんっ……と、音が聞こえた。
「ぁっ……」
背筋に光が伝い走る。
うるんだしずくにぬめる指が、とろり、と。
円を描く。
「……んっ……ぅ……」
魔術めいた指づかいが、しとどに濡れた、甘い花の蜜をすくい取って。
花びらを、左右に、押し開く。
「これでも、もう、しないと?」
「ぁ、ううん……しない……しないもん……」
「本当に?」
「ぁぁん……やぁっ……ああ……するぅ……やめないで……」
「もちろんですよ」
つややかに濡れた欲望の花芽が、ざわめく快感に甘く花開き、膨らんでゆく。
もう――
さんざんに焦らされて、もてあそばれて、待ち疲れて、疲れ果てていた、はずなのに。
どうして、こんなに――!
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