" お月様
お月様にお願い! 

1 お月様にお願い!

「わあっっ……!! ご、ご、ごめ……!」
「ぁっ……きゃ、あっ……!」
 最悪の事態を避けようとしたとたん。
 少女が焦って腰を揺り動かした。
「あっ……!」
 ぐっ、と。深く、潜り込む感触が伝わる。
「わ、あ、あっ、動いちゃだめだって……!」
「ぁっ……あっ……?」
 少女がよろめく。
 ぬるり、とした感触が取り囲んだ。暖かい、熱い、湿り気を帯びた部分に、触れる。
「う、わっ……!」
 このままでは本気で入ってしまう。ルロイは逃げだそうとした。
「や、や、やば……!」
「あ、あんっ、待って! そんなに急に動かないでくださいませ……ぁんっ、あっ……動けないわ……!」
「ご、ご、ごめ……はやく……!」
「何か、ひ、引っかかって……ぁ、ぁ……どうしましょ……は、入って……ああっ……!」
 少女は、腰を浮かそうとしてできず、そのまま、呆然とルロイにもたれかかった。
「ぁっ……あっ……」
 みるみる、顔が薔薇色に染まってゆく。
「ど、どうしよう……ご、ごめ……ほんとに、ご……!」
 ルロイは少女の身体を持ち上げようとした。だが、離れようとすればするほど、少女の身体とルロイの身体とが深く、しっかりと結び合わされ、互いに埋め合って、離れない。
「あ……もう……だめ……」
 力尽きたように少女が腰を落とす。
「わっ、あ……!」
 完全に。
 つながる。
「う、動かないで……ください……」
 少女は、顔を真っ赤にし、眼をとろりとうるませながら喘いだ。
 かすかに、くちゅ、っ、と濡れた音がする。
「……私……どうしたらいいのか……分からないのですけれど……いったい……どうなってますの……? 何か……その……動いたら……」
「ご、ごめん、ホントにごめんっ……す、す、すぐ、抜くから……!」
「あんっ……だめ、動かないで……!」
「ええっ!?」
「動いたら……苦しいの……その……」
 少女のうるんだ眼が、苦しげに宙に泳いでいる。
「何が……どうなってるのか……分からないんですけれど……動かれたら……凄く……その……ぁっ、あっ、や、やだ、ホントに、動かないでくださいませ、おねがい……ですから……あっ、ああっ……動かないで!」
「動いてないって、しっかりして。だめだよ、こんなことしてたら、さっきの兵隊がまた……!」
「それは、分かっています……でも……ぁっ……ど、どうしましょ……動けない……!」
「大丈夫だから……ちょっと、我慢してくれればはずせるから……!」
「ぁ……んっ……」
 ルロイが、じわり、と腰を引くと。
 少女の身体が、びくん、とひきつれたように震えた。
「あっ、あっ、ああっ……!」
 うわずった声が喘ぎに混じる。
「大丈夫、落ち着いて、もう少しだから」
「う……んっ……」
 少しずつ、少女の身体を浮かせてゆく。
「ぁっ……ぁ……!」
 あと少しで、引き抜ける。ルロイが思わずほっとして、気を緩めたとたん。
 目の前に、少女のおっぱいが、ふるん、と揺れるのが見えた。
「うっ……!」
「ぁ、んっ! 中が……感じちゃう……!」
 少女がぶるっと身体を震わせた。
「や、あっ、やっぱり……動かさないで……へんな声がでちゃう……っ!」
「あ、あっ……ごめ……!」
 乱れた吐息だけが、白く、幾重にも重なり合う。
 少女は快楽に涙をにじませながら、ルロイを睨んだ。全身に汗が滲んでいる。
「どうしよう……動けない……」
「ごめん……」
「ううん……」
 少女は、弱々しく笑うと、ルロイの胸にもたれかかった。
「ごめんなさい……重いでしょ……?」
「そ、そんなことないよ」
 ルロイは今にも暴発しそうな下半身を必死に押さえようとしながら、引きつった顔で笑った。
「大丈夫」
「座ってるから……動けないんだと思うの……」
 少女は息を乱しながら喘いだ。
「立って……お互いに反対方向へ動けば、取れるんじゃないかしら……?」
「ええっ……?」
「一緒に、立ち上がってみましょ?」
「ちょっ……!?」
「ほら、お願い。私だけじゃ動けないわ……」
「えっ、いや、その……ぁ、っ……!」
「ぁ、あ、あっ……だ、から、一緒に……来てって……ぁっ……!」
 つながったまま、じわじわと身体をずらし、同時に起きあがろうとする。
「ぁ……んっ……!」
 少女はよろめいて壁に手を付いた。
「大丈夫?」
「は、はい……ぁっ……!」
 ルロイが背後から少女の腰をおさえ、抱きかかえる。少女は壁に身体を押し当てて、息苦しく喘いだ。
「ぁ、あっ……やだ……何、これっ、あっ……違う……や、やっ……ああっ……もっと……どうしましょ、あっ……あ、そこ……やだ、凄い……っ!」
 立ち上がりさえすれば勢いでどうにかできるかもしれない、との目論見があっけなくはずれる。今度は背後からつながってしまって、まともに動けない。
 少女は、感じすぎる身体を、びくっ、とふるわせた。息が乱れて、声までがかすれて。なまめかしいほど、目尻が赤く染まっている。
「ど……どうなっちゃってるの……わたし……?」
「ご、ごめん、すぐ離れるから……!」
「だ、だめっ……!」
 少女は、耳まで真っ赤にしていやいやとかぶりを振った。
「動かれたら、また……身体の中がヘンになっちゃう……!」
「そんなこと言われてもさ……!」
 ルロイは、乱れた吐息で少女の耳元に熱く暖めながらうめいた。
「俺……限界だよ……!」
「限界って……何が……ですか……?」
「動かないでいることがだよ!」
「動けば……少しは楽になれるということですか?」
「お、俺は、だよ! つながってるの、はやく抜きたいんだろ? だったらつべこべ言わずに、俺の言うとおりにしろ!」
「……ルロイさん……」
 少女は涙に濡れた眼で肩越しに振り返った。
「でも……」
「いいから! さもないと、最後まで行っちゃって取り返しがつかなくなっちまうぞ」
「えっ……そ、それは、どういう……?」
「そんなこと言わせるな!」
 ルロイは真っ赤な顔で怒鳴った。
「いいから、もう、声出すな。変な声出されたらどうしようもないんだから! 分かったか!?」
 怒気を含んだ強い口調に、少女は涙ぐんだ。
「はい……わかりました……」
 弱々しくうなずく。
「ルロイさんの……言うとおりにいたします……」
 岩壁に、ちからなくもたれかかる。
「……」
 ルロイは少女の腰を掴んだ。
「ぁっ……!」
 たった、それだけの刺激で、少女の腰が浮き上がる。白い肌が目に焼き付くようだった。
「うっ……」
「ぁ、あ、はぁっ……動いてる……中で……ぁっ、あっ、動いて……いやぁ……抜けちゃう……!」
「抜けちゃう、じゃなくて、わざと抜いてんだって! このままだと何もできないだろ!」
「そ、そうでした……ぁ、っ、でも……ああっ……気持ちいい……ああ、や、やだっ……」
「ちょ、ちょっとマテ! 押しつけて来ちゃダメじゃないか……ぁ、う、うっ……!」
「ち、違います、私じゃありません……身体が、あ、あっ、勝手に、ああっ……気持ちよすぎちゃって……ぁっ!」
「ま、待って、ホント、もう、ヤバいって、俺、動いちまうって、マジ……ぁ、うっ……!」
「ぁっ、あんっ、ルロイさんが……奥にあたって……あっ……ああっ……!」
「も、もう、これは俺のせいじゃないからな……!」
「ご、ごめんなさい……あんっ……ああっ、あっ、でも、気持ち良すぎてっ……止まらないんです、あっ……あっ……ああっ……も、もっと、そこ触ってくださ……ああん、何、奥まで……入ってるのっ……あ、あっ……」
 腰が揺れ動く。うわずった甘い泣き声が洩れ響いた。低い喘ぎ声が、濡れた音とともにからみつく。
「や、ヤバイよ、ダメだ……俺も、すごい、ヤバイって……あっ、あ……!」
「ぁぁ、んっ、んんっ……!」
「も、う、限界、出る……!」
「な、何が……!?」
「ごめん、とにかくもう出すから! お、俺のせいじゃないからなっ……!」
「あ、あっ……はい、分かってます、ごめんなさ……ぁ……ああんっ……!」

 痙攣にも似た絶頂を越え、ようやく、少女は、もがくのを止めた。
 ぐったりと、半ば放心状態でルロイの腕に抱かれている。
 萎れた花のようだった。とうてい自分の足で立てそうにもない。
 ルロイが腰を動かすと、ちゅぷん、とちいさく泡立つ音とともに抜け落ちて、したたるしずくがこぼれおちた。白濁の液があふれて少女の足を濡らす。
 ようやく、はずれる。
 ルロイは、疲れ果てた吐息をついた。
 いくら不測の事故とはいえ……だ。
 人間を、抱いてしまっては――ただでは済まない。
 子どものバルバロが、人間に生け捕られ、奴隷にされる最大の理由。
 それは――

 少女はルロイの腕に身体をあずけたまま、熱に浮かされた吐息を漏らした。
「ごめんなさい……ご迷惑を……おかけして」
「も、もういいよ……俺だって……我慢できなくてやっちゃったし……謝るよ……」
 ルロイは、どぎまぎと真っ赤な顔で目をそらした。これ以上少女の裸をみせられ続けていると、また気持ちがかき乱されて、何とか押さえ込んだ発情を再び呼び起こされそうで、居ても立ってもいられない。
 ルロイは少女に上着を突きつけた。とにかく、何か着せてやらないと、目に映るものすべてが、危険だった。
「そ、それより、とにかく、話を聞かせてくれよ。何で追われてたんだ? お前、人間だろう」
「……」
 渡された上着に、少女はだまって袖を通す。
「答えろよ」
 ルロイは少女を睨んだ。
「……」
 少女はまだ答えない。
「答えられないのか」
「いいえ」
 少女はルロイを見上げた。眼に涙がいっぱいたまっている。
「本当に……ご迷惑を……おかけして……申し訳なく思っています……でも」
「でも?」
 少女は、うつむいた。
「わたし……」
「何だよ、もう」
 ルロイはいらいらと遮った。
「はっきり言ってくれよ」
 少女は、唇を噛んだ。逃げるような視線がルロイからそらされる。
「……どうして追われていたのか……その理由も……何で、ここにいるのかも……ぜんぜん分からないんです」