" お月様
お月様にお願い! 

1 お月様にお願い!

「バルバロは、発情したら……狼になるんだ」
 ルロイの声が、変わった。シェリーは声をうわずらせ、喘いだ。
 身体の、中の、ルロイが、ぐっ、と熱を増したような気がする。それだけじゃない――
 全身が、ぶるぶる、震えだしそうだった。
「ルロイ……さ……!」
「一週間は続く。我慢してくれ」
 背中に、ルロイの唇が押しつけられる。
 ささやく声は甘くかすれ、わずかに揺れていて、身体中の感情という感情、快楽という快楽をざわざわ呼び起こす弦のようだった。
「悪いけど……もう我慢できないんだ。言っただろ、バルバロは人間とは違うって。一度……発情したら、雌と……やらないと……身体中にあの、あれが溜まって……めちゃくちゃ苦しくなるんだ」
「ぁっ……あっ……何を……!?」
「とにかく……我慢できないんだ……自分で出すんじゃダメなんだ……雌とやらないとダメなんだって……もう、マジで苦しい……」
 ルロイの荒い吐息が吹きかかった。抱きしめる腕の力が、ぐっ、と強まってゆく。シェリーは息苦しさに喘いだ。
「ルロイ……さんっ……ぁっ……!」
「この状態が次の満月までずっと続く。でも、言っておくけど、シェリーのせいだからな……」
「ぁっ……!」
 ぐるり、と、身体の中のルロイが、ねじれた。
「んっ……ん……!」
「シェリー」
「ぁ、あ……!」
 ルロイにうずめつくされてゆく感覚に、シェリーは声もなくただ、息を乱して答えた。
「ルロイ……さん……」
「何だよ……やめろって言ったって……止められないって言っただろ……!」
「う、ううん……そうじゃない……!」
 身体の中が、光を発してしびれているかのようだった。
「ぁ、あっ……気持ち……いい……ルロイ……さん……ごめんなさい……わたしの、せいで、苦しい思い、させるぐらいなら……」
 シェリーは腕を上げ、背後から腰を回すルロイの首に手を回し、からめた。
「何でも……しますから……! どうすればいいか言って……ください……わたし……言うとおりにします……ぁっ、あっ、あっ……ああ……!」
 乳房が、突き上げられるたびに揺れ動く。
 そのたびに、肉で肉を打ち合うみだらな音が響いた。
 身体の中を、固いルロイの部分が激しく動き回っている。掻き回されて、突き上げられて。
 くちゅ、ぷちゅ、にちゅっ、と。
 いやらしい音を立てて、濡れたその部分を、いっぱいに満たして、こすり合わせて。
「どうしたら……いいか……教えてください……」
「そのままでいい」
 低い喘ぎがルロイの喉からもれる。
「俺の……動きに、合わせて動いてくれたらいい。声も、出せばいい……苦しかったら、そう言ってくれればいい……気持ちよかったら、良いって言ってくれたらいい……そうしたらせめて、もっと、もっと、気持ちよくさせてやれる……!」
「ぁ……うっ……うん……はい……!」
 折り重なって、抱き合う。そのたびに、くちゅ、くちゅ、音がして、荒い息がはずんだ。
「気持ち……いい……ルロイ……さん……」
「さんはいらない。ルロイって呼べよ」
 ルロイの指が、胸をぐっ、と掴んだ。やわらかい肌に指先が食い込む。
「そうしたら、もっと、俺……めちゃくちゃ興奮するから……」
 指と、指の間から、乳首の先が押し出されるようにはみ出した。
 あわいピンク色の先が、ぴん、と感じやすく固くすぼんで、たちあがっている。
「ぁっ……あっ……」
 乳首を、指で転がされて。
 身体の中を、ぬるり、と太い塊で押し破られて。
 シェリーは、うわずった喘ぎを漏らした。
「ぁっ……あっ……む、むねが……あっ……!」
「すごく柔らかい。感じやすい身体してるんだな」
「は、はい……? それ……は、どういう……ことですか……あっ……あんっ……!」
「ちょっと触っただけで、めちゃくちゃ……あそこが締め付けてくるってことだよ」
 ルロイは耳元でささやいた。
 吐息が、ふきかかる。
「ぁあっ、あっ……ひ……ぁあんっ……!」
 全身が、ぶるぶる、震い上がる。背中から、腰の奥までが、ぞくぞくして、しびれが駆け回っているかのようだった。
「ぁっ、くすぐった……い……ですっ……!」
「ちょっと息がかかっただけだぞ」
「ぁっ、あんっ、でも……!」
 吐息がますます上気して、みだれる。
「じゃあ、さ」
 ルロイは、ふと、声を低めてささやいた。
「もし、もっと……いやらしいことしたら……どうなっちまうんだろうな……?」
「ぁ……!」
 シェリーの顔が、みるみる真っ赤に染まった。
「ぁっ……な、何……なさる……おつもりなのです……か……?」
「さあね」
「ぁ、あっ……ああ……!」
「もしかして、知りたい?」
「……ルロイ……」
「こんなこととか」
 つ、つ……、と。
「ぁっ、あ、あっ……!」
 全身を、手が、這い回る。
「ぁ、やあっ、はあ、ああんっ、あ、んっ、やぁっ、そこ、そこは……んんっ……ひぁあいっ……!」
 熱い息が耳に吹き込む。
 舌が、ちろり、と、耳朶を舐めた。
 身体が、びく、と反り返る。
「ひぁん……っ!」
「本気でめちゃくちゃ感じやすいんだな、シェリーは」
「ち、……がいます……別に……ぁっ、あっ、あっ……!」
 耳元を舐められ、息を吹きかけられ、首筋を、くわえられ、喉に舌を這わされて。
 そうしながら、胸をやさしく、激しく刺激されて、揉み上げられて。
 さほど、ルロイ自身は動いてもいないのに。
 シェリーの身体が快楽に引きずりあげられるたびに、勝手に、腰が、いやらしく動いて、振り回される。
「ぁ、あ、あっ……はあっ、はあっ……」
 ちゅぷ、ぷちゅっ、にゅぷっ、くちゅっ……
 音が、さらに、大きくなる。
「ホントに、めちゃくちゃ、ああっ、凄い、きも、ち、いい……です……あ、あ、もう、わけわかんな……ああっ……へんな……声……でちゃう……ううん……っ……!」
 シェリーの、大きく開いた股の間から、ルロイの猛々しいしなりが盛り上がるようにして突き立っている。
「これどうしたら、いいんです、か……あんっ、あっ、あっ!」
 膝ほどもあろうかという太さの肉茎が、奥の奥にまで、ぬぷっ、とめり込んで。
 肉の割れ目を、ねろり、くぷり、押し広げる。
「ぁ、あ、ひっ……あぁ……!」
 真珠のように染み出した愛液の露が、とろっと糸を引いて、こぼれ落ちた。
「お、奥まで、全部入っちゃうっ……あぁ……!」
 にゅちゃ、にちゃ、と音を立てて、肉がこすりあわされ、濡れそぼった音を立てる。めくれ上がったひだの隙間から、荒々しい出入りとともに、みだらなしずくが押し出されてゆく。
「シェリー」
「は……ぁ、あっ、はい……何ですか……」
「大丈夫か?」
「ぁ……あっ……」
 とろとろに上気し、とろけきった眼で、シェリーはルロイを振り返った。
「わたし……今……ルロイさんから見て……どんな……ふうに見えてます……か……?」
 ルロイは、ぎゅ、っとシェリーの身体を抱きしめた。
「可愛いよ。めちゃくちゃ、可愛い」
「……ほんと……? ヘン……じゃないですか……? さっき、から、まともに息、できないし……ぁ、あっ……声……かすれてきたし……ぁあんっ、んっ……くるしい……ぐらい……ルロイ……さんが……いっぱい……中にいるの分かるけど……変な音……してるし……!」
「もっと……もっと、恥ずかしい……感じにさせてやりたいんだけど……いいか?」
「ぇ、ええっ……!?」
「返事は?」
「……っ……ん……」
 シェリーは、ルロイの手にとろかされながら、身体をあずけた。
「どうしてほしい?」
「……ルロイ……さんの……したい……ように……」
「いやだね。俺は、シェリーがして欲しい、って言ってくれたことしかしない」
 笑い声とともに、いたずらな吐息が肌をなぞる。
「もう一回聞くぞ……どうしてほしい?」
「っ……」
 シェリーは、喉をそらして喘いだ。あまりの気持ちよさに、身体の力がまるで入らない。
「ぁ、あぅん……っ」
「言わないと、どうなるか……分かってるんだろうな?」
 くちゅ、くちゅ、と。腰を使われ、揺らされるたびに、恥ずかしい泡立ちの音がする。
「あっ……あ……わ、わからない……です……!」
「そんなことないだろ? シェリーは、今、自分が何をどうされてると思ってるんだ……?」
「ぅ……抱っこ……されてます……」
「突っ込まれてるの間違いだろ?」
「な……何を、ですか……?」
「可愛い顔して、肝心なところは、ちゃんととぼけるんだ?」
「……ぁっ…ん……揺らさないで……っ! わかんないです……ほ、んとに……何が……どうなってるのか……はぅんっ……」
「分かんないの? マジで言ってる?」
「……んっ……ごめんなさ……わたし……何も……知らなくて……!」
「マジかよ、驚いたな……じゃあ、教えてやる」
 ルロイは、シェリーの耳元にそれの呼び方をささやいた。
「声に出して言ってみて」
「えっ……?」
「いいから」
 シェリーは、ぎゅ、と目をつむった。真っ赤な顔をそらし、蚊の鳴くような声で言う。
「ルロイさんの……お……お、ち……」
「”さん”も、”お”も付けなくていい」
「やぁっ……!」
「もっと、はっきり言ってくれないと聞こえないな。これを、どうして欲しいか……ほら、言って」
「で、でも……!」
「じゃ、もう、やめようか」
「いやっ……ぁ……!」
 思わずぶるぶると首を横に振ってしまって、シェリーは顔を赤らめた。
「やっぱり、して欲しいんだ?」
「ぁ、……は、はい……!」
 穴があったら入りたい、とはこのことだ。シェリーは、息苦しいぐらい声をあえがせてうなずいた。
「ルロイさんの……ぴんぽろを……」
「ぴんぽろっ!?」
「違った……ちんころでした……!」
「ちんころっ!?」
「わたしの……おたまに……いれてください……!」
「おたまっ!?」
「ぁぁっ……はずかしい……!」
 顔を真っ赤にしたシェリーに、ルロイは思わず噴き出す。
「かなり微妙に違うんだけど」
 苦笑いして続ける。
「まあいいや。じゃ、お望み通りってことで」
 意地悪な笑みを口元に含ませて言う。
「上から順に触っていくから」
「ぁっ、やぁっ……!」
「一番、気持ちいいところで、止めてって言って」
「う、ううんっ……」
「返事は」
「ぁっ……あんっ……はい……」
「だめだ、ちゃんと言え。シェリーの一番気持ちいいところを教えてください、って」
「……っ!」
 シェリーは身体をのけぞらせた。
 今度こそ、恥ずかしさのあまり、身体じゅうが真っ赤に火照り出す。全身が熱い。ルロイに抱かれて触れ合っている肌が、汗ばんで、女の匂いをさせて、むせかえりそうだった。
「ぁ、あっ……わかりました……シェリーの……ぁ……気持ちいい、……ところ……教えて……ください……!」
「良くできた。ホントに可愛いな、シェリーは」
 ルロイは頬を寄せ、背中にキスした。
「じゃ、まずは……このあたりからだ」
「ん……」
「あれ、あんまり……気持ちよくなさそうだな……?」
「い、いいえ……気持ちいいです……あっ、あっ、動いちゃ……あっ……!」
「ここは……?」
「ゃあっ、あっ、ああっ……! くすぐった……い……ぁっ……」
「そうか? 首筋って、そんなに感じる場所じゃないはずだけどな。じゃ、こっち」
「……ぁっ……あ、あっ、ああっ……きもち、い……いい……ひぁっ……やら……あ……!」
「おっぱいはやっぱり気持ちいい、と、じゃ、こうやって、もっと、こう、全体をゆっくり寄せた状態で……ここを、くりくりしたら、どう?」
「ぁ、あっ、ああっ、そんなことされたら、あっ……! あ、あ、ああっ……!」
「舐めてやる。こっち向けよ」
「や、あっ……!」
 完全につながったまま、身体の向きを入れ替えられ、上から、のしかかられる。
「ぁ、あ、あっ……ふ……!」
 れろり、ぺろ、り、と。
 柔らかい犬めいた舌が長くのびて、乳首に巻き付いた。
「ぁっ……!」
 はあ、はあ、とけだもののような荒い息を吹きかけられながら、なめずられる。
 その音が、淡い乳首の先を敏感に刺激した。
「う、うっ、ううん、ぁっ……やあっ……!」
 大きく揉み上げられ、舌の先で、感じるところを転がされて、
 その間にも。
 もう一方の手が――
 下腹部へと、のびてゆく。
 開かされた足を、さらに、もっと、恥ずかしいかたちに、すべて押し開いて。
 ルロイの何もかもを、根本まで呑み込んでいる、そこに。
 触れる。
「ぁああ……あっ、あ、気持ち、いい……だ、め、あんっ、そこは……!」
「へえ、ここ気持ちいいんだ……?」
「あ、あ、いやっ、あ……はい……!」
 かろうじて覆われていた部分を、指の先で、剥き出しにされて。
 つ、ん、と尖って突き出した、身体の中心、肉の花芽を。
 くちゅ、にゅる、ゆるり、と、指の先で押し回すようにして、繊細にこすりあげられる。
 先走りの露と、シェリー自身からいくらでもあふれてこぼれる愛液とが、身体の中で混ぜ合わされ、泡立って、とろとろと透明な糸を引いて落ちた。
「ぁ、あっ、ああ、ルロイ、さん……ぁんっ、やだ、あっぁぁ、んっ……すごい……」
「そんなに感じる?」
「はうっ……気持ち……いいです……いちばん、きもちいい……シェリーの……身体で……そこを……ぁっ、あっ……そうされるのが……一番気持ちいいです……!」
「分かってるよ……可愛いな、やっぱり……じゃ、ご褒美にもっと気持ちよくさせてやる」
「ぁ、あっ、んっ……!」
「指で、こうやって……ここ、隠れてるだろ……? それを、こう、やるとさ……? ほら、出てきた。これだ」
「ぁ、あ、ゃあんっ……広げないで……はずかしい……」
「恥ずかしい、じゃなくて気持ちいい、だろ?」
 くにゅ、ゆる、ぬるり、触られる。濡れた指先で、優しく愛撫される。
「……ぁう……ん……きもち……いい……です……も……もっと……!」
「ん? もっと? 何がもっとだ?」
「……っ……!」
 シェリーはあえいだ。はずかしさに上気した息が乱れ、声にならない。
「もっと気持ちよくさせてやりたいけど、でも、せっかくだからさ、シェリーの反応をじっくりと楽しませてもらおうかな……?」
「ぇぇっ……!?」
「最初は時間を掛けて、ゆっくりイかせてやる」
「待っ……やだ、ルロイさん……どこかに行っちゃうんですか……!?」
「イくのは俺じゃないんだけど……って、ホントに何も知らないんだな」
 吐息と笑いを深いキスに混じらせ、とろとろとからませあいながら、ルロイは笑った。
「ああ、いや、たぶん大丈夫だ。俺も一緒にイく」
「んっ……ぁ、はい……お願いします……!」
「……へ? そんなふうに言われるの初めてなんだけど……いや、分かった。頑張る。俺、シェリーのためにもっと頑張る!」